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相続税の配偶者控除|計算方法や適用条件を解説

相続税の計算をする際、各種控除の適用も検討することが大事です。控除の適用があるかどうかで納付額にも大きな差が出てきます。
その中でも特に効果の大きな控除が「配偶者控除」です。

 

当記事では配偶者控除の計算方法や適用条件について解説します。

 

相続税の配偶者控除とは

相続税法第19条の2には「配偶者に対する相続税額の軽減」と題される控除制度が規定されています。

これは一般に「配偶者控除」と呼ばれ、被相続人の配偶者に適用が認められている控除のことです。

 

他の控除制度とは一線を画す、非常に大きな税額控除の効果が得られる制度です。
形式的には被相続人から配偶者に移転する財産であっても、実質は夫婦で協力して築いた財産も少なくありません。

このような場合にまで他の相続人と同じ形で課税されたのでは、配偶者が不満を抱いてもおかしくはありません。

そこで配偶者に対する配慮という意味合いも、配偶者控除には含まれています。

 

相続税の配偶者控除の計算方法

相続税の配偶者控除の額は、常に一定ではありません。状況に応じて計算結果が変わってきます。大きく「法定相続分に応じて遺産を取得するケース」と「法定相続分を超えて遺産を取得するケース」に分けて説明することができるのですが、結論を簡単にまとめたのが下表です。

 

配偶者が取得した価額

配偶者の取得割合

配偶者の税負担

16,000万円以下

法定相続分以下

0

法定相続分を超える

0

16,000万円超

法定相続分以下

0

法定相続分を超える

取得分に応じて発生

 

詳しい計算方法について、以下で説明します。

 

配偶者が法定相続分で取得するケース

民法上、相続人別に“法定相続分”が規定されています。

 

配偶者であれば、子どもなどの第1順位の相続人と共同相続するときは、「1/2」。親などの第2順位の相続人と共同相続するときは「2/3」。

兄弟姉妹などの第3順位の相続人と共同相続するときは「3/4」の法定相続分が認められます。

 

遺産分割協議で相続人の同意があれば法定相続分とは関係ない割合で取得することもできますが、法定相続分に沿うのがある種公平な遺産分割であるともいえます。
そして配偶者が法定相続分で取得、または法定相続分に満たない割合で遺産を取得したときは、配偶者控除を適用することにより相続税額は0円となります。

 

配偶者控除の額を算出する計算式を簡単にまとめると次のように示すことができます。

 

配偶者控除の額 = 相続税の総額×(X/Y)

 

※ X=(“16,000万円”または“法定相続分”のいずれか多い方)と(配偶者に関する相続税の課税価格に相当する金額)のいずれか少ない方

※ Y=相続税の課税価格の合計額

 

遺産の総額が4億円であったとしましょう。このすべてが課税対象になるとすれば、Y=4億円となります。
共同相続人が配偶者と長男である場合、法定相続分は1/2で、配偶者の取得分は2億円です。

 

このとき相続税は、次の計算に従い、「配偶者の相続税額が5,340万円」。「相続税の総額は1680万円」となります。

 

課税遺産総額	=	4億円-4,200万円(基礎控除額)
		=	3億5,200万円
相続税の総額	=	(3億5,200万円×1/2×40%-1,700万円)×2
		=	1億680万円

 

ここから得られた値を配偶者控除の額を算出する計算式にあてはめると、次のようになります。

 

配偶者控除の額	=	1億680万円×(2億円※/4億円)
		=	5,340万円

 

※まずは“16,000万円”と“法定相続分”を比較。法定相続分は2億円であるため後者が採用される。

次に“配偶者に関する相続税の課税価格に相当する金額”と比較して少ない方を採用するが、ここではどちらも2億円であるため、この金額を代入。

 

そして配偶者が実際に取得した遺産は全体の1/2ですので、相続税額も1/2で分割し、5,340万円になります。控除を適用した結果、相続税額は0円です。

 

配偶者が法定相続分を超えて取得するケース

次に、配偶者が法定相続分を超えて遺産取得するケースで考えます。

 

前項に示した条件で、配偶者が3億円を取得したとします。
課税遺産総額と相続税の総額に変わりはありません。しかし実際の取得割合(3億円/4億円)に対応した配偶者個別の相続税は、1680万円×3/4で「8,010万円」となります。

 

そして配偶者控除の額についても、結果的に同じ値となります。

 

配偶者控除の額	=	1億680万円×(2億円※/4億円)
		=	5,340万円

 

16,000万円と法定相続分の2億円を比較した多い方は「2億円」。次に、配偶者に関する相続税の課税価格に相当する金額である3億円と比較した少ない方は「2億円」。そこで2億円を計算式に代入。

 

よって、配偶者の負担すべき相続税は「2,670万円」となります。

配偶者の相続税	=	8,010万円―5,340万円
		=	2,670万円

 

 

ただし、同じ“法定相続分を超える遺産の取得”という条件下でも、相続税が0円になることはあります。
例えば上の例と同じく3/4の割合で取得したとしましょう。しかし「遺産の総額が2億円」であるときは、取得分が15,000万円となり、相続税の総額も次の通り変わってきます。

 

課税遺産総額	=	2億円-4,200万円(基礎控除額)
		=	1億5,200万円
相続税の総額	=	(1億5,200万円×1/2×30%-700万円)×2
		=	3,160万円

 

そして取得分に応じた配偶者の相続税は、3,160万円×3/42,370万円です。

続いて配偶者控除の額ですが、次の計算式に従い2,370万円と算出できます。つまり配偶者が実際に負担すべき相続税は0円となります。

 

偶者控除の額	=	3,160万円×(1億5,000万円※/2億円)
		=	2,370万円

 

※まずは16,000万円と法定相続分を比較。法定相続分は1億円であるため、多い方は前者。次に配偶者に関する相続税の課税価格に相当する金額である15,000万円を比較し、少ない方である15,000万円を採用し、この金額を代入。

 

相続税の配偶者控除の適用条件

上記の通り、控除額がとても大きな配偶者控除ですが、適用条件を満たさなければ利用できません。適用条件は以下の通りです

 

  1. 被相続人の配偶者であること
  2. 遺産分割協議が終わっていること
  3. 相続税の申告手続を行うこと

 

被相続人の配偶者であること

配偶者であるということは、婚姻届を提出して法的に夫婦であることが認められていたことが求められます。

 

そのため内縁関係にあるだけでは不十分です。そもそも内縁の妻や夫の場合は、相続人になることができませんので、相続ができません。

遺言書を使った遺贈により遺産を取得することは可能ですが、このときに配偶者控除は利用できません。

 

一方で、配偶者であれば相続放棄をしたとしても配偶者控除を利用することは可能です。

相続放棄により相続人としての立場は捨てることになりますが、遺言書があれば受遺者として遺産を受け取れるからです。

 

遺産分割協議が終わっていること

配偶者の実際の取得分や取得割合が確定しなければ、配偶者控除の算定ができません。

 

そのため遺産分割協議を終えていることが適用条件の1つとなります。

 

※相続税の申告後に遺産分割する場合でも、分割の成立翌日から4ヶ月以内に更正の請求を行うことで適用できることもある

 

相続税の申告手続を行うこと

配偶者控除は自動的に適用されるものではありません。相続税の申告手続が必要です。

納税額が0円になる場合、申告自体が不要になることもあるのですが、配偶者控除を適用するなら申告作業を省略できません。

 

そこで、税務署に税額控除について記載した相続税の申告書を提出する必要があります。
またその際、戸籍謄本や、遺産分割協議書の写しなどの配偶者が取得した財産が証明できる資料も添付します。
遺産分割協議書の写しを提出するときは、相続人全員分の印鑑証明書も添付します。遺贈を受けるときは遺言書の写しも必要です。

 

二次相続まで意識した配偶者控除の利用がポイント

配偶者控除をフル活用(全遺産を配偶者が取得するなど)すれば、納付すべき相続税を親族全体で0円にすることもできます。

 

しかし節税を考えるなら、その時点における相続税だけでなく、二次相続も意識しないといけません。

遺産総額が大きいほど大きな税率が適用されますし、税制を理解して上手く遺産分割を調整する必要があります。

 

具体的にどのように分割するのが良いのか、相続税額はいくらになるのか、詳細は税理士に聞くと良いでしょう。

状況に合った的確なアドバイスが得られ、手続の代行で進めてもらえます。

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