経営管理ビザとは? 取得のメリットや要件、要件該当性の判断について解説
「日本で自分の会社を立ち上げたい」「経営者として日本で働きたい」といった願望を持つ外国人の方は、経営管理ビザの取得を検討すると良いでしょう。当記事で経営管理ビザとは何か、その概要や取得のメリット、取得のために満たすべき要件についてまとめていきます。
経営管理ビザの概要
経営管理ビザとは、「日本で事業の経営や管理に従事する活動を行うための在留資格」のことです。
日本には、学生として在留している方や従業員として在留する方など、いろんな外国人がいます。経営管理ビザは、そのうち企業の経営者になる方を対象としたビザです。新たに日本で起業して事業を始めたいという方、すでにある日本の企業にて経営者や管理者という立場で働きたいという方は、この在留資格の取得を目指すこととなります。
経営管理ビザ取得のメリット
経営管理ビザを取得することの意義、メリットは次のように整理することができます。
日本でビジネスを始められる
当然のことですが、経営管理ビザを取得して日本に在留すれば、日本でビジネスを始めることができます。
すでに海外で起業をしており、その外国企業の子会社を日本に設立するときにも経営管理ビザの取得が効果的です。
新たに会社を立ち上げる、すでにある会社に出資して経営に携わる、など経営管理ビザによりビジネスに関わるさまざまな活動が可能となります。
高度専門職ビザへの変更が狙える
経営管理ビザを保有して活動を続けていると、高度専門職のビザ(高度専門職1号ハ)が取得できる可能性があります。
「高度専門職1号ハ」は、事業の経営または管理に従事する活動を行う高度人材が取得できる在留資格のことです。
取締役や管理職に該当する人物であって、その他所定の要件を満たすことで取得が可能になります。
このビザを取得することで、複合的な活動が許容されたり永住権についての要件が緩和されたり、さまざまな恩恵を得られます。
取得に当たって重要となるのがポイントです。
学歴や実務経験の年数、年収や年齢、投資額などをポイントに変換し、そのポイントが70点以上に到達する必要があります。
家族を日本に呼びやすくなる
経営管理ビザを取得することで、家族滞在ビザにより、配偶者や子どもなども日本に呼びやすくなります。
家族とともに日本で暮らせるかどうかは、扶養能力にかかっています。
一定額以上の役員報酬を得ており、家族を養うだけの十分な経済力を持っていなければなりません。
家族の人数に対して役員報酬が少ないと評価されると、家族滞在ビザが認められません。
経営管理ビザの取得要件とは
経営管理ビザの取得要件についても簡単にまとめます。
まず、経営管理ビザという在留資格に適合する活動内容であるかどうかが判断されます。つまり、経営者・管理者として業務を行う人物であるかどうかが見られます。また、その事業や運営方法が違法なものであってはいけませんし、ある程度安定して継続できる状況になくてはなりません。
その上で、事業所の有無と事業規模についても審査されます。
以下で、これら取得要件について解説します。
なお、管理者として経営管理ビザを取得しようとする者は、これらの要件に加え、当該業務につき3年以上の経験を持つことと、日本人が従事する場合の報酬と同等以上の報酬を受けていることも示せなくてはなりません。
経営者または管理者として活動すること
入管法で規定されている「本邦において貿易その他の事業の経営を行い又は当該事業の管理に従事する活動」という条文に合致する活動を行う人物でなくてはなりません。
つまり、予定している活動が事業の「経営を行う活動」であること、あるいは「管理に従事する活動」であることが必要です。
前者は、経営に参画し、事業を実質的に運営することを指しています。
取締役や代表取締役、監査役などの役員がする職務はこれに該当すると考えられます。
後者は、企業の一部門を統括することを指しています。
必ずしも役員である必要はなく、部長や支店長、工場長といった肩書の従業員であっても満たせることがあります。
なお、審査対象になるのは肩書ではなく実質の地位ですので、取締役に就任したからといって絶対的に要件を満たせるようになるわけではありません。
事業の運営を適正に行っていること
もちろん、活動内容に違法性があってはならず、運営は適正に行われている必要があります
そこで、特に着目したいのが「納税義務を果たすこと」と「労働環境の整備」です。
所得税や法人税、住民税などを適切に納付していない場合、審査に通りにくくなります。
労働環境に関しては、労働基準法等の労働関係、および社会保険関係の法令を遵守していることが求められます。
事業を運営・管理する立場としては、税務や労務関係が適切に処理できていることが最低限求められています。
事業が継続できること
事業が不安定で、いつ倒産するか分からない場合、許可は下りません。予定している活動が安定していること、継続できることを示せる必要があります。
ただ、事業活動に際して赤字が生じることも珍しくなく、特に立ち上げ当初から利益を安定的に出すことは難しいです。
そのため赤字決算になったからといって即座に否定されるものでもありません。
そこで事業の継続性に関しては、直近二期の決算状況と売上総利益、欠損金や債務超過の状況などを総合して評価されます。
例えば直近期または直近期前期で売上総利益があるときは、欠損金、債務超過の有無がチェックされます。
一方、直近期と直近期前期の二期連続で売上総利益がないときは、当該企業にかかる事業の継続性はないと評価されやすいです。
しかしながら、新興企業が独自の技術開発、新しいビジネスモデルに基づいて事業を成長させようとしているときは、二期連続で赤字になってしまうことも考えられます。そのため赤字が続いていても、状況次第では審査に通る可能性があります。
事業所が確保されていること
日本国内に事業所が確保されていることも必要です。
賃貸物件を事業所として使うケースも多いですが、賃貸借契約においてその使用目的が「事業用」などと事業目的であることが明らかにされていなければなりません。また、契約の名義人が法人であることも必要です。
なお、ベンチャーのような立ち上げすぐの企業だと、住居を事業所と兼用することもあります。このときは以下の要件を満たしている必要があります。
- 事業目的での使用を貸主が承諾している
- 事業を行うために設備等を備え、事業目的占有の部屋が確保されている
- 公共料金等、共用費用の支払いについて明確に取決めがされている
- 看板などが掲げている
事業規模が一定以上であること
事業規模についてもチェックされます。そこで、以下のいずれかには該当している必要があります。
事業規模の要件 | 「日本に住む2人以上の常勤従業員の確保」 | 「資本金または出資額が500万円以上」 |
詳細 | 経営管理活動に従事する外国人のほか、日本に居住している常勤の従業員が2人以上従事している必要がある。 当該従業員については、日本人や日本人の配偶者、あるいは永住者・永住者の配偶者・特別永住者・定住者の在留資格を持つ人物でなくてはならない。 | ビザを取得しようとする外国人が自ら出資する必要はなく、出資したのが他の人物であっても問題ない。 |
※いずれかの要件に該当しないときでも、実質これらと同等の規模を持つと認めてもらうことができれば要件を満たすことは可能
なお、資本金や出資については、その資金調達方法についてもチェックされますので要注意です。
海外からの送金記録を示す、あるいは現金で持ち込んだ場合は税関での申告や申告証明書の取得が必要です。
家族から資金を借りたときは、家族関係が証明できる書類と課税証明書等(貸し手の資力を証明する書類)を準備し、金銭消費貸借契約書も準備しておきます。
これらは見せ金を使ったビザ取得を防ぐために求められるチェックです。そのため、本当に不正・違法性のない資金であったとしても調達の背景を一切示すことができないときは、経営管理ビザを取得することは難しくなってしまいます。
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