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決算で赤字が出た場合の法人税|申告の要否や欠損金の繰越控除についても解説

決算で赤字が出た場合、法人税はどうなるのでしょうか。経営者視点だと「どうやって黒字にもっていくか」という戦略的な部分も重要ですが、経理視点で「税務上はどのように扱うのか」という点にも目を向ける必要があります。

企業の財務管理においても重要なことですし、ここで赤字決算となった場合における法人税の取り扱いや申告のことなどをチェックしておきましょう。

赤字になったときの法人税について

法人税は企業の利益に対して課される税金です。

基本的な仕組みとしては、企業の収益から費用を差し引いた課税所得に税率を乗じて計算されます。

しかし、赤字の場合は課税所得がゼロとなりますので、納付すべき法人税が発生しません。

赤字とは何か

税務上の「赤字」を正確に表現すると、「欠損金」といいます。

欠損金とは、法人税法上の課税所得がマイナスの状態を指し、つまり、1年間の事業活動によって損失が生じた状態を意味します。
しかしここで注意が必要なのは、“会計上の利益”と“税務上の所得”が必ずしも一致するわけではないことです。

  • 「会計上の利益」
    ・・・企業会計原則に基づいて計算され、費用の取り扱いについては企業の実態を反映するため比較的幅広く捉える傾向にある。
  • 「税務上の所得」
    ・・・法人税法に基づいて計算され、費用の取り扱いについては法令で定められた範囲内でのみ厳格に捉える傾向にある。

このような違いがあることで、会計上は利益が出ていても、税務上は赤字(欠損金)が発生しているという事態も起こり得ます。

赤字決算のときの申告について

赤字決算で、欠損金が発生しているときは、上述のとおり法人税の負担も生まれません。そのため法人税に限っていえば申告をしなくても違法ではありません。

しかし、申告を行うことで「欠損金の繰越控除」ができるようになるなどメリットもありますので赤字でも申告をしておくことが推奨されています。

申告を行う場合、決算書の作成に加え法人税申告書を作成。電子申告または書面でこれを提出します。この作業を「事業年度終了日の翌日~2ヶ月以内」に済ませる必要があります。
もし決算月が3月の法人であれば、申告期限は531日です。

※期限が土日祝日の場合にあたるときは、その翌営業日が期限となる。

欠損金の繰越控除について

欠損金の繰越控除を活用することができれば、将来の税負担を軽減でき、企業の財務体質を改善する機会が得られるかもしれません。

以下にこの制度の概要をまとめます。

欠損金の繰越控除とは

当期の赤字額を将来の黒字と相殺できる制度のこと。

最長で10年間の繰越が可能で、将来の法人税の負担を軽減することができる。また、資金繰りの改善にも寄与する。

ただし、この欠損金の繰越控除を適用するためには青色申告を行っていることが条件。赤字決算であっても確実に申告を行う必要がある。

例)1年目に2,000万円の赤字が発生。2年目に1,500万円の黒字、3年目に1,000万円の黒字になったとする。

1年目:課税所得は0円。欠損金2,000万円。

2年目:1,500万円の黒字-2,000万円の繰越欠損金=課税所得は0円。残りの欠損金は500万円

3年目:1,000万円の黒字-500万円の繰越欠損金=課税所得は500万円。残りの欠損金は0

なお、この恩恵を受け続けるには青色申告の継続が必要となりますので留意してください。赤字決算となった年だけでなく、その後も続けて申告をしないといけません。

赤字決算における実務上の注意点

赤字決算となったときには、黒字の場合とは異なる実務上の注意点があります。

適切に対応していくことが事業の継続、安定性を向上させるために重要であり、将来的な税務リスクの軽減にもつながります。

原因分析と改善への取り組み

赤字だと税負担は小さくなりますが、そのままだと事業が継続できませんし、法人住民税や固定資産税など別の税についての納税資金が不足してしまいます。

そこでなぜ赤字になってしまったのか、その原因を分析して改善に向けて取り組むことも重要です。何に着目し、どのように改善していけばいいのか、一般的な手法を下表にまとめます。

原因分析の視点

具体的な取り組み

売上高

・新規顧客開拓に向けた営業活動強化

・既存顧客に対する新たな提案

・価格戦略の再検討

・販売チャネルの多様化 など

売上総利益率

・原価管理の徹底

・仕入先の見直し、または価格交渉

・生産効率の向上

・製造プロセスの改善 など

販管費

・経費使用のルールを見直す

・業務効率化によるコスト削減

・アウトソーシングの活用

・人員配置の最適化 など

在庫管理

・在庫回転率の向上

・デッドストックの処分

・発注方法の見直し

・需要予測の精度向上 など

債権回収

・与信管理の強化

・回収条件の見直し

・取引条件の見直し など

設備投資

・投資計画の見直し

・設備稼働率の向上

・リース活用の検討

・不要資産の売却 など

資金繰り

・運転資本の最適化

・支払条件見直しに向けての交渉

・資金計画の精度を上げる

・資金調達方法を多様化させる など

組織体制

・業務プロセスの見直し

・責任体制の明確化

・人材育成の強化

・組織統廃合の検討 など

収益面と費用面の双方からの分析が大事で、また、短期的な対策と中長期的な施策のバランスにも留意してください。

赤字決算における税務調査対策

税務当局から「不適切な経理処理や税務処理の可能性がないか」「欠損金の繰越控除が適正に行われているか」などの疑いをかけられる可能性があり、その確認のため税務調査を受けることもあります。

赤字決算においては特に以下のポイントが重点的に見られる可能性があるため留意しておきましょう。

  • 売上の計上漏れがないか
  • 経費を過大計上していないか
  • 役員給与の額は妥当か
  • 関連会社との取引の適正性
  • 資産評価は妥当か など

実地調査(自社まで調査官がやってきて行う調査)が行われるときは、調査官からの質問に正直かつ丁寧に回答すること、赤字の原因や経営状況について適切な説明をすることをこころがけてください。

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